ちょっと憤慨したので書く。/と、追記アリ

18日付の北海道新聞の朝刊。

浅田次郎氏のエッセイが事実ではない、誇張だ、として地元民から反感を買っているという話なんだけど、ものごっつ「浅田氏に不利」な書き方がしてあって気になった。浅田氏のエッセイが掲載されたのは、JALの機内誌なのでその期間中にJALを使わないと読めないよね。その本文の内容が正しく要約された上での記事なら問題ないのだけれど・・・

実際は、いろいろと主張が噛み合っておらず、何一つ浅田さんの「心配事」が解決されていない記事だった。つまり、朝市組合側からの集中爆撃みたいなもん。

と、書いていたら「読売新聞」で続報が23時付けで配信が。


今朝の北海道新聞で「作家の浅田次郎が、JALの機内誌に連載中のエッセイの中で函館朝市に関する事実ではない内容を書いたため、地元が憤慨」という記事が掲載されていた。

事の発端は、浅田次郎氏がJALの機内誌Skyward12月号に自身のエッセイ内で函館朝市であわや詐欺?という体験をしたと書いたことだ。今朝の北海道新聞だけに目を通すと、個人的な印象では、「浅田次郎氏に対して悪意を持った記事」だというように感じるほど「浅田氏が一方的に悪い」ように書かれている。しかし、問題となっているJALの機内誌にも目を通すと、受け取り方はガラリと変わると思われる。

機内誌の内容を抜粋し、箇条書きにするとこうだ。

・浅田次郎氏は、函館競馬ながく訪れている函館フリークだが、去年は競馬場の改築の為函館を訪れることはなかった。毎度朝市の”なじみの店”でカニを購入し、自宅へ配送してもらっている。
・そんな折り、函館の朝市のお店から浅田さんの自宅にカニの営業電話が掛かってきたという。
・いつも買い物をする際には、店名を気にせず”馴染みの店”を利用していたので、当然住所や電話番号はある特定のお店にしか知らせていない。そのため、函館朝市から電話という時点で、”馴染みの店”だと思い、「今年もかにが食べられる!」と発注した。
・しかし、実際に届いた時の状況は、「例年の倍以上の値段で手書きの伝票。さらに、嫌いなタラバガニがメインで長期冷凍保存していたと思われるもの。それに、カチコチに凍った毛蟹2個」。値段を代引きで聞いた時に妙な印象は受けていたけれど、「不景気だし」と納得した。しかし、中身を見たら”馴染みの店ではありえない「タラバだった」”そして、物が悪い。
・慌てて手書きの伝票に記載されている電話番号にかけると、「番号が使われておりません」

さて、ここでこの駄文を読んでいる人に、自分の立場に立って考えて欲しい。

旅先で知り合ってよくしてもらっているお店と思われる店から電話が掛かってきた。商品を発注し、送ってもらったら、いつものあのお店では考えられない品が届いた。怪訝に思って問合せの電話をしたら、電話が通じない。

ここまで状況が揃ってしまうと、「騙された?!」と思っても無理は無いのではないかと思う。裏を取るにもとりようが無いわけで。さらに書くと、函館朝市を騙る悪徳商法の噂も、実際のところ後を立たない状況だ。

で、ここで浅田氏が主張している(不安に思っている)のは、2つ。1つは、詐欺に気をつけるべきだ(この時点では、受注した会社と連絡が取れないので、詐欺だったと判断して良いかと)。もう1つは、自分が”なじみの店”に渡していた個人情報が、なんらかの原因で漏れたのではないか?という懸念。有名人ともなれば、その心配は強いでしょう。

この機内誌が発表された後、すでに12月のうちに朝市から浅田さんにお詫びの品が届けられたという話も耳にした。事態は終結したと思われた、が、そうはいかなかったというのが今朝の道新。

朝市組合が「加盟店の伝票を調べたところ、浅田さんから6月にカニの発注を受け、配送したという記録が残っていた。品物はちゃんと届いたのだから『詐欺ではない』。浅田さんのエッセイは事実無根だ。」と抗議した、という内容。

北海道新聞の取材によると、浅田さん曰く、「多少の脚色はした」とのこと。

しかし、だ。

もちろん、浅田さんの記事にもツッコミどころはあるのだけれど、今回の場合は北海道新聞の記事の方にツッコミどころがたくさんありすぎる。

1つは、何一つ真実が明らかになっておらず、肝心なところは煙に巻かれているということ。問題の焦点は、「本当に浅田さんの馴染みの店で受注をしたのか」ということだと思う。しかし、道新の記事では「組合加盟店の伝票」と記載されている。それでは、浅田さんの手元にある「手書きの伝票」はなんだったのか。そして、なぜ電話が通じなかったのか。

「手書きの伝票」というエッセイ本文の部分が「脚色」だったとしたら、この議論は無駄なのだが、そもそも『朝市組合加盟店』の配送伝票がこのご時勢にもかかわらず、「手書き」というのは疑問である。

また、朝市組合の主張では「カニ1キロを送った」とあるが、浅田さんの主張では「タラバと毛蟹2個が入っていた」とある。ところが、タラバと毛蟹で1キロというのは、量的に妙である。

参考リンク:http://item.rakuten.co.jp/yaocyu/c/0000000157/
(リンク先は本文とは関係ありません)

浅田さん曰く、「事務所の社員、家族に振舞おうとしていた」わけなので、1キロ以上発注しているのでは?と思われる。ちょっと変だ。

更に言うと、なんども利用している”なじみの店”の店員が、いわゆる有名人のお客さんの「好み」を把握していないということがありえるのだろうか?ありえるとしたら、本件とは別件で、朝市のお店には反省して欲しいと考える。いちげんさんならイザ知らず、数度注文を頂いたお客さんが、「タラバを軽侮している」とまで書いているわけだから、覚えておくのは接客業としては『最低限のライン』だと思う。

最後に、一番「曖昧模糊」にされているのが、伝票があったとされる店が、浅田さん馴染みの店であるかどうかというのが記事内では明らかになっていない。途中までの論調では「馴染みの店」となっているのにも関わらず、最後には「加盟店」と表現が変わっている。これでは、浅田さんがエッセイ内で述べていた「個人情報が漏れているのでは?」という疑問に答えていることにはならない。

ながながと書いてきたが、浅田さんのエッセイ内での主張を「事実無根」だと立証するには、証拠が全く足りていないといえるのではないだろうか。

逆に、この北海道新聞の記事が出てしまったことで、私は朝市の裏側に大きな巨悪があるのではないだろうか?という疑念すら抱いてしまった。また、現時点での朝市組合の主張では、「加盟店が粗悪なカニを送ったのが事実である」ということになってしまう。それでよいのか?

もっと書くと、函館に何度もお越しいただいている『有名人』の顔に泥を塗るようなことをしてしまった函館朝市と北海道新聞。根拠が確かで、全ての懸念事項が明らかになった上で「事実無根だ」と主張しているのならばまだしも、私が述べたように記事にも朝市の主張にもなんら明らかになっていることがない。逆に浅田氏から「名誉毀損だ」と訴えられてもおかしくない。

おまけに、JALの機内誌だって編集を通しているわけだから、浅田氏のエッセイをチェックし掲載した編集者、ならびに
その会社、JALに対してもケンカを売っていることになるのでは?

打算的な考え方だが、『有名人の函館ファン』を大切にしておけば、『別の有名人の函館ファン』が芋づる式に増えていく可能性も否定できないだろう。以前、吉本ばなな氏がとあるお店である行動を取って店から冷たくあしらわれた際に「有名人を袖にするなんて、長期的な視点で物事を考えられないオーナーだ」というような話を書いていたが、状況は異なるが、全くその通りで、観光客減にあえぐ函館なのだから、もっと上手に浅田氏を「利用」すれば良いのに。素早く対応してお詫びの品を届けた代わりに、次のエッセイでことの顛末をエピソードにしてもらうとか・・・そうしたほうが、朝市組合ちゃんとしてんじゃん!ということで、多くの人々に好印象を与えることができたろうに・・

とにもかくにも、北海道新聞の今朝の記事は、とんでもなく浅田氏に不利なように書いてあって驚いた。仮にも「中立」を保ち、真実を暴かなければならない新聞社なのに・・・全く残念である。

※※
追記。18日23時に読売新聞にて続報。道新の朝刊を受けて追加取材したんかのう?
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100118-OYT1T01326.htm?from=ranking
(直リンクの許可を取っていないのでリンクしません)
読売新聞によると、「カニを発送したのは”馴染みの店”」だったとのこと。浅田さんによると、「届いたカニに不満があった。朝市には迷惑を掛けた。」とのこと。

この記事を見ると、「電話が通じない云々」が脚色だったのかな?
そこが明らかになると、ずいぶんと記事の印象が変わりますね。この書き方だと、浅田さんに非があることがわかる。

・・・とはいえ、馴染みの客である浅田さんにさ・・・カニ1キロでしかも駄目なカニを送ったわけだよな・・・。

どっちにしろ、色々と謎というか、妙な感じがするなあ。。。カニ1キロなんて商品は微妙すぎるという話もあるし、なんで「悪徳商売」をした朝市が上から目線なんだ??

観光の町、函館、それでいいのかー?


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