映画「カケラ」/2010年

安藤モモ子監督作品てことで、「0.5ミリ」に引続き。こっちが監督デビュー作ですね。もっと彼女が撮る映画を観たいので、今後の活躍に期待しつつも、その他の活動がめちゃめちゃ忙しそうなので、今はそういう時期なのかなと。でも、撮ってほしいなあ。

閑話休題。

原作は桜沢エリカの漫画。桜沢エリカといえば、オリーブ系というかなんというか、まあ、90年代初頭にゴリッと流行ったなあーという記憶。自分は小学生とか、せいぜい中学生頃でバブルの終わり頃を想起させるような作風っちゃ作風。

くだらねえ男と付き合ってる満島ひかり演じるハル。このハルってのが、まあいいだけモラトリアム風で大学生の頃の自分や同級生を思い起こさせる感じ。もちろん、地方都市で理系大学生をやっていた自分はあんなにリア充風味の生活を送っていたわけではない(バイトと大学ですごした感じで)。とはいえ、空気感やあんまりキラキラできない生活とか、そのへんのなんかモヤッとしたところが妙にリアリティがあって、20年前の自分達を思い出させるようで、まだちょっとアイタタタタタタって感じ。更に20年ぐらい立てば、「そんな時代もあったねと~♪」ってくらいには達観できるんだろう、たぶん。

それで、ハルはくだらない二股男と付き合っているのだけど、その過程である日義手などを仕上げるメディカルアーティストのリコに声をかけられる。リコはイマドキ風に言うとオープンリーゲイで、初対面からまあまあぐいぐい口説く口説く(笑)。ハル的には、かなりの窮地を救ってもらった(あるいは、見せることになってしまった)ことで、ある種の深い親密感を持つこととなって、友情と愛情の合間をたゆといながらリコと仲良くなっていくんよね。

印象的なシーン

その窮地ってのは、急に来た生理で「やっべぇぇぇこの!」ってなってる時に、下着から生理用品までをリコに仕入れてきてもらうという場面。これが、男性相手だと親密になるとか無いと思うんだけど、女性同士だからこそ、ここでぐっと親密になって、なんなら友達以上の親愛を感じていくようになるんだよねえ。。。たぶん。

実際にはこんなにはっきり「クソヤバい!」みたいな状況になることは少ないんだけど、おそらく、このワンシーンを入れることでハルのなんか駄目なとこと、一気に親密度が上がるところをまとめてクリアさせてるんだろう。演出的に。女性監督じゃないとこの辺は難しいでしょう。

ノンケへの恋はゲイ側の不安が倍増する

しかし、元々ノンケ、またはバイセクで直前まで男の彼氏がいたハルと、おそらくバイセクでもパンセクでもないビアンのリコ。

付き合い始めてからのリコは、かなり自己中心的で情緒不安定で押しが強い、つまりエキセントリックな人であるに描かれているのだけど、俯瞰してみるとリコがちょっとかわいそうかな。おそらく、渦中にいると、人の目を考えずにマイノリティであることを堂々と公言して彼女を戸惑わせる人物・・・・・・って感じに思えるんだろうけど、リコにしてみたら、もともと女性を恋愛対象にしていなかったハルを相手にすると、そりゃ、普段から不安で不安で仕方ないのは当然で、ハルのことを好きで愛しくて恋している度合いが高まれば高まるほど、不安だろう。

相手のことを思いやって、信じて見守ることこそ、相手への愛情で、相手を大切にするということだと個人的には考えているが、時に自分の不安や寂しさや悲しさで手一杯になってしまうんだよな。特に、ノンケを彼女にしてしまったらなおさらその不安や寂しさは倍増するだろう。「相手は気の迷いで自分と付き合っているんじゃないか?」「欠けたパーツを補うためだけに自分と一緒にいるのではないか?」そう考えてしまうと、自分との二人の世界以外に大学生活、大学の世界にも自分の席があるハルに対して、同しようもない気持ちを持て余してしまってもおかしくない。

ハルがリコのその”不安”に向き合って、少しでも寄り添うことができれば、リコもあそこまで極端な行動は取らなかっただろうし、それによって、二人の関係がギクシャクすることもなかったように思える。しかし、前彼との付き合い方をみていても、ハルは相手に流されることはできても、寄り添うことはしてこなかった(そこまで包容力がない)人なのかもしれない。もちろん、経験が圧倒的に足りていない未熟な大学生というところを考えると、それも仕方がないことだと思えるが。

色気ムンムンのかたせ梨乃の登場

最初はリコの作品のクライアントとして登場するかたせ梨乃。まーほんと、かたせ梨乃はエロい。思えば、むかーし見たドラマで(たぶんドマイナーなやつだ。wikiにも書いてないくらいだ)、かたせ梨乃の色香にやられていらい、たぶん私の中でのエロくて魅力的な女の雛形になってしまっているかたせ梨乃。ガキながら渋すぎる趣味だろうよ…自分。

そんなかたせ梨乃が、リコが通うビアンバーの客でリコにちょっかいを出す。そして、ノンケとの恋に疲れたリコが、まあ、グラっとくるよね(笑)楽だしさ。余計なこと考えなくていいし。

でも、好きな女からのコールで一目散にかたせ梨乃のを投げうって走っていくさまは、現実にそれが出来るかどうかは別として、心情的にはリアリティにあふれている!(笑)

結論はあんまりない、オチも

実は、あまりにも痛々しくて、起承転結の転に当たるシーン15分くらい早送りしちゃったんだけど、まあ、リコの鬱陶しさ…というか不安にハルは向き合えるはずもなく。なぜならば、前述のようにハル自身が未成熟で自分にすら寄り添えていないのだから、リコの大きすぎる不安と持て余した心なんかにゃ抱えきれるわけがない。それで、二人は別れたか距離を置く。

ハルは後輩のモブ男に「好きなものはちょっとずつゆっくり食べたほうがいいんだよ」というセリフを吐かれ、リコを思って号泣するわけだ。うーん、やるせない。青春だねえ。それで、「着てみたい」といっていたスカートを身に付けて、八百屋のおじさんに声をかけて財布を持っていなかったのにみかんをもらう。このシーンは、ハルが自分の足で歩き始めて、少し大人になった事を象徴するシーンかな、と。

フランス映画的に余韻をもたせる終わり方ではあったんだけど、ハルのモラトリアム的な痛々しさにも、ノンケに惚れて色々自分の気持を抱えきれなくなるリコの痛々しさも、妙に自分の中の若かった自分にグサグサ刺さる感じでしんどい映画だった。二人の百合ップルシーンは、かわいいけど。

あと、自分の中の「うほ!いい女!」の雛形がかたせ梨乃にあることを思い出させてくれた作品でした(;^ω^)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B1%E3%83%A9_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

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